第100話「地球温暖化と生物多様性」
高度経済成長の時代がぼちぼち終焉し、新しい環境時代の幕開けといわれた1992年、リオディジャネイロの「地球サミット」、主要テーマには「気候変動」条約と「生物多様性」条約がありました。
それから17年、「気候変動」については、 “温暖化”?という語彙に少し違和感もありましたが、「地球温暖化対策」という用語が、いまでは市民権を得て社会に完全に溶け込みました。気候変動条約にもとづく1997年の「京都議定書」、「温暖化ガス6%削減」、そして2009年、鳩山新内閣による「温暖化ガス25%削減」なども日常用語となっています。
一方の「生物多様性」そして「生物多様性の危機」は、やっとここ1~2年ニュースによく登場するようになりましたが、まだまだ身近なものにはなっていません。

写真1 埋立てられ、わずかに残る干潟(三原市)
生物多様性とは、多様性条約では「すべての生物の間の変異性(種内の、種間の、生態系の多様性を含む)」と難しく定義されていますが、単純には「いろいろの生物がいること」、また「生物はその一種類だけでは生きられず、生物同士がさまざまなつながり(食う、食われる、共生するなど)を持って存在している状態」ということでしょうか。
そして、わたくし達ヒト(人間)は、衣食住はもちろん郷土料理などの伝統的地域文化など豊かな生活基盤を、多様な生物がもたらす恵み(生物多様性)に依存しています。
地球誕生から46億年、多細胞生物誕生から10億年、その間5回の大量生命絶滅危機がありました。
そして現代は第6の大量絶滅時代といわれています。
ちなみに、その情況は次のようです。
- (1) 2億5000万年前
- 火山大噴火(太陽光遮蔽) 90%生命絶滅
- (2) 6500万年前
- 巨大隕石の衝突(恐竜の絶滅) 50%生命絶滅
- (3) 現代
- 既知の生物種175万種 評価対象種の40%が絶滅の危機
そして絶滅速度が格段に速い(過去数百年のおよそ千倍の速度)
では、現代の生物多様性はどのようにして破壊されているのでしょうか、その原因は?。第3次国家戦略によると次の4つことが示されています。

写真2 ほとんど見られなくなった絶滅危惧種の生きたカブトガニ
(2) 生活様式の変化による自然環境(里地里山)の放置(写真3,4)

写真3 里地のどこにでもあったヒガンバナも少なくなりました

写真4 キキョウも手入れされた里山でしか見られません
(3) 外来生物による生態系の撹乱(写真5,6)

写真5 日本中を覆いつくす勢いのセイタカアワダチソウ(前方)とメリケンカルカヤ(後方)

写真6 セイタカアワダチソウとメリケンカルカヤは宮島にも侵入

写真7 開花が年々早く感じられるソメイヨシノ

写真8 地球温暖化を如実に示す地上気温統計
また、この国家戦略では
(1) 次なる100年へ向けてのグランドデザイン (2) 今後5年間の重点施策 が掲げられています。

写真9 生物多様性国家戦略

写真10 日本の野生生物
とくに(2)の中には、生物多様性の重要性を社会へ浸透させることが、あらためて述べられています。さらに、地方公共団体、企業、市民団体、市民のそれぞれの立場での役割や取組例も記されています。
(「第3次生物多様性国家戦略」の解説パンフレット(写真9,10)が、環境省から発行されています。ぜひ、ご一読下さい。)
1997年の気候変動(温暖化対策)京都国際会議と対峙するように、来年2010年には生物多様性国際会議が名古屋で開かれます。京都会議と同様に大規模な国際会議となることでしょう。ここでは、2010年目標の「生物多様性の破壊速度を顕著に減少させること」が討議されます。
ひとり一人が、それぞれの立場でこの国際会議に関心を持ち、またこの機会に生物多様性の重要性をあらためて認識されることを期待します。
ずーとむかし、朝日新聞に「百人百話」という随筆欄がありました。
これを思いながら、この小文を書き始めて8年余。
この間、環境の話題もその折々に変化し、また環境への社会的関心もずいぶんと高まりました。
そして、今回でとうとう予定の100回・百話となりました。
これにて完了といたします。
長い間、この拙文にこりず、我慢強くお付合いいただいた方々に、厚くお礼申し上げます。
完
