第85話「世界自然遺産・屋久島」
屋久島はおよそ直径25kmのヤクスギを輪切りにしたような円い島です(写真1)。そして、自然の宝庫です。1993年、東北の白神山地とともに世界自然遺産に登録されました。
その登録の要因の一つは、亜熱帯から亜高山帯に及ぶ「植生の垂直分布」です。
海岸から急峻する標高1936m宮之浦岳を主峰とした山岳島・海洋アルプス。日本最南端の高原湿原や最北端のガジュマル林などの幅広い植生を一度に見ることができます。

写真1 屋久島の概観図
植生は、海岸から順にガジュマルなどが繁茂する海岸林・亜熱帯林(写真2)、標高600mまではシイ・カシが茂る照葉樹林、 600mを超えるとぼちぼちヤクスギが目に付く移行帯、そして1000m辺りからヤクスギの森といわれる針広混交林帯を経て、1700m以上の低木帯(頂上植生)の5つに分けられます。
この度、かたく云えばエコツアーで、ふつうに云えばハイキング・軽登山で、この「植生の垂直分布」を見学し、次々に変わる林相を堪能してきました。

写真2 大川浦の海岸・亜熱帯林
屋久島のトレッキングは、荒川登山口~縄文杉~宮之浦岳コースが最も人気がありますが、今回はメンバー7人の年齢構成を考慮して、費用対効果ならず体力対効果を最優先し、安房(林道・レンタカー)~淀川登山口(写真3)~標高1831m黒味岳コースを楽しみました。

写真3 淀川登山口の賑わい

写真4 樹齢3000年の紀元杉
林道沿いの標高1230mに推定樹齢3000年の紀元杉があります(写真4)。胸高囲8.1m、縄文杉の16.4mには及びませんが、なかなかのものです。
途中淀川小屋で一休みして、淀川登山口から3時間余りで標高1630m日本の最南端高原の泥炭湿原「小花之江河」そして「花之江河」です(写真5)。極楽浄土もこれほどにはと思わせる景勝地です。木道脇には屋久島山岳宗教の名残を残す石の祠もあります。
貧栄養に耐性あるヤクシマミズゴケモドキなどの貴重な湿原植物を見ることができます。しかし、ここへは四方からの登山道が集まっているため土砂の流入や持込も多く、木道沿いに(写真6)少しずつ富栄養化し、ヤクシマオバコなどの人里の植物が侵入し始めています。

写真5 小花之江河湿原

写真6 花之江河の木道
ここを通りぬけると、目の前にはヤクスギの枯存木が立ち並びます(写真7)。屋久島特有の風景です。枯存木は台風によって枝をもぎ取られてはいますが、必ずしも枯れているのではなく、根が生きていて根元の枝に緑の葉をつけているものもあります。すばらしいヤクスギの生命力を感じました。
そして、頂上植生は待ちかねたヤクシマシャクナゲの群落です(写真8)。石楠花の開花には表・裏年があるそうですが、さらに今年は60年振りの当り年ともいわれ見事でした。

写真7 ヤクスギの枯存木

写真8 山頂付近のヤクシマシャクナゲ
黒味岳山頂です(写真9)。山頂の露岩を見てびっくりしました。長石の斑晶がよく発達した花崗岩でした。なんとなく溶岩(火山岩)だと思っていたものですから。・・この続きは次回に。

写真9 黒味岳山頂の露岩
