第86話「世界自然遺産・屋久島(2)」
屋久島の代表は、何と言っても「屋久杉」です。
日本では、3つの地域が世界自然遺産に登録されています。そして、それぞれのキーワードは、知床は「流氷」、白神山地は「ブナ」、屋久島は「スギ」です。
屋久杉は日本各地に分布するスギと同じ種類のものです。屋久島は日本杉の南限です。
屋久島では、樹齢1000年以上の自生杉が「屋久杉」と言われ、1000年以下のものは小杉、植林杉は地杉とよばれ区別されています。
巨大な屋久杉は、標高1200m辺りに多く見られます。樹齢は数千年のものもあります。

写真1 標高1200m付近の屋久杉
ところで、これまでの数千年以上の長い年月、屋久杉(写真1)が生き延び、長寿を保ってきた要因は何でしょうか。一つは、年間4000mmを超える降雨(写真2、3)と霧(写真4)。つぎに、屋久島花崗岩(写真5)からなる貧栄養の土壌と冬季には積雪もある冷涼な気候・・他の植物にとってはけっして恵まれていない自然環境です。

写真2 奥岳の水を湛えた淀川

写真3 水量を誇る大川の滝

写真4 霧に包まれた奥岳

写真5 屋久島花崗岩の岩塊

写真6 屋久島付近の地図

写真7 ブナの原生林(中国山地)
そして、最も大きい要因は「ブナ」との生存競争がなかったこと、でしょうか。ブナが進出してくると、スギはブナに負けます。光を好むスギよりも、ブナはより暗いところで生育できるからです。
ブナは針葉樹を駆逐しながら、氷河期に大隅半島(写真6)まで南下しました。しかし、屋久杉にとっては幸いなことに、ブナ(写真7)はなぜか屋久島にはたどり着かなかったようです。
また一方で、屋久島の北約40kmの海底に硫黄島を縁とする海底火山・鬼界カルデラがあり、約6300年前に大噴火を起こしました。その火山灰は屋久島を覆いつくし(写真8)、火砕流は森林を焼き払ったともいわれています。そのときに、すでにブナが植生していたか、またそのとき消滅したかは定かではありません。

写真8 屋久島を覆っている火山灰層
近代化とともに、全国で森林開発が進み、今やブナの原生林は大変貴重なものとなりました。白神山地に限らず、あちこちでブナ原生林の保護活動がなされています。
しかし、樹林に人為的な所業が入らなければ、冷温帯地ではブナが優占種です。縄文時代には日本中がブナ森林だったともいわれています。
年輪が緻密で、樹脂分が多く腐敗しにくい屋久杉は、江戸時代から1960年代まで平木などの建材として大量に伐採されてきました。しかし、自然の大切さが見直される今日、伐採は完全に禁止されています。いま、貴重な屋久杉工芸品として出ているものは、昔伐採された材木の残り木や、その切株の土埋木、風倒木(写真9)などを材料としたものです。

写真9 道路脇の風倒木
