第88話 「宮島弥山・大聖院登山道復旧(1) 」
今回は、久しぶりに宮島の話題です。
3年前の9月、台風14号がもたらした白糸川の土石流(写真1)で大聖院登山道が寸断され、一般の通行は禁止されていましたが、この度復旧工事が完了しました。10月1日から一般の通行もできるようになり、早速、装いを新たにした登山道を見分させていただきました。大聖院山門(写真2)の横、登山道の入口付近は跡形もなく土石流でえぐられていましたが、流れ落ちてきた岩石や土砂も庭園風にうまく組合わせて整えられています(写真3)。

写真1 白糸川土石流災害

写真2 大聖院山門

写真3 白糸川の石原
今は、岩肌がむき出しであまり風情がありませんが、やがて年月が経てば、1945年(昭和20年)の枕崎台風の復旧工事で同じように整備された、紅葉谷公園の渓流庭園(写真4)のように宮島を代表する素晴らしい景観となることでしょう。
土石流の爪痕や、街中を守るように新設された第2堰堤(写真5)を見ながら少し登ると滝宮と白糸の滝です。

写真4 紅葉谷公園の渓流庭

写真5 設された第2堰堤

写真6 今の白糸の滝
白い絹糸が流れ落ちる滝水と無数に飛び交う蛍の名勝地です。ここは宮島八景のひとつ「滝宮の水蛍」にも選定されていて、高倉天皇をはじめ、文化人によって数多くの和歌や俳句が詠まれています。しかし、滝宮は度々の台風により倒潰し、また白糸の滝は落石と滝岩の崩壊でその姿を変え(写真6)、蛍も見かけなくなりました。残念ながら、むかしの風情は望めません。高倉天皇が、今ここをご覧になったらどんな和歌を詠まれることでしょう。
これから上は、「弥山原始林」です(写真7)。倒木も散見されますが、特段の被害はないようです。世界文化遺産・厳島神社の背面に位置する「弥山原始林」は亜熱帯植物の宝庫です。

写真7 「弥山原始林」識標

写真8 里見茶屋跡の東屋
やがて、東屋風の展望台「里見茶屋跡」(写真8)標高166mです。ここは、宮島の寺社仏閣や町並みとその甍、そして大野瀬戸を行きかう船など、山と建物と海そして静と動が見事に調和した眺望第一の場所です(写真9)。私のお奨めポイントのひとつです。
しかし、だんだん眺望が悪くなってきていました。とくに3年ぶりの今回はそのことを強く感じました。これは、多島美の景観を目玉とする瀬戸内海国立公園の展望台の共通問題です。自然保護の観点から、登山道や散策道など安全性が損なわれない限り、樹木や草木の伐採が原則的に(頑なに)禁じられているからです。

写真9 里見茶屋跡からの眺望
それなりの許認可手続きをすれば、眺望を損なっている繁茂した樹木や草木を伐採することはできるのでしょうが、その煩雑さを思うといまひとつ・・・ということで、宮島に限らず瀬戸内海のあちこちで眺望の地が失われています。これに限らず、目的と手段の入れ替わりは良くあることですが。
