第95話「宮島・廻れば七里七浦」
宮島では慶事の後にはそのお礼も込めて、舟で宮島七里七浦の沖を一周する島巡りの伝統があります。大元神社の拝殿ではその証として奉納されている、「厳島巡り」と記された大きな額をいくつも見ることが出来ます。
この島巡りの由来は、厳島神社の御祭神が島内の鎮座の地を舟から御巡見になった折り、先導した神鴉の故事によるものです。
正式に島巡りをするには、神官が乗る「御師の舟」をはじめ、それなりに舟揃えや複雑な前準備を要すため、よほどの分限者か団体に限られているようです。
一方で、一般の参詣者にもこの伝統行事に参加できるよう「講」が設けられています。毎年5月15日がその行事日です。そして、儀式も簡素化されています。ここ数年、参加者は1~200人規模でしょうか。今年もこれに参加しました。
船は、厳島神社境内を早朝に発ち宮島の沖を時計回りに、聖崎、蓬莱岩(写真1)を見ながら杉の浦神社へ。つづいて、包ヶ浦神社で神鴉への朝御食の式(写真2)。今年は幸先良く神鴉すぐにお出ましありました、がしかし 。

写真1 宮島の北端 聖崎と蓬莱岩

写真2 包ヶ浦神社での朝御食式

写真3 青海苔浦神社参詣
鷹巣浦神社、腰細浦神社を沖から遥拝して青海苔浦神社前へ着船、しばし参詣(写真3)。
再乗船して養父崎神社沖へ。ここで、島巡りの第一の神事「御烏喰式」。神官が楽を奏しながら(写真4)「しとぎ団子」を供え(写真5)、神鴉のお出ましを待ちます。お出ましあればめでたし、めでたしですが。ここ3年続けて神社裏の杜(写真6)からお出ましありましたが、ところが今年は待つこと1時間、駄目でした。参加者の中に「潔斎精進が不十分のものあり」のお告げとも。

写真4 神官の楽奏

写真5 しとぎ団子

写真6 養父崎神社の杜
山白浦神社を沖から拝しつつ、宮島全景を俯瞰し、樹木の植生を観察。やがて、左手に可部島を見ながら宮島南端の奇岩革籠崎 (写真7) を廻り、あての木浦、長浜の自然海岸と白砂(写真8)を堪能。須屋浦神社前へ着船、参詣。ここで直会、そして休憩にあわせて海浜植物(写真9)の観察です。

写真7 宮島南端の革籠崎

写真8 長浜の自然海岸

写真9 絶滅危惧種 イワタイゲキ
御床神社を沖から拝し、烏帽子岩、内侍岩などの謂れを思いながら、網の浦に上陸。大元神社参詣、厳島御本社へ帰り、あらためて祭典、お神酒を戴いて七里七浦のお島巡りの式は終了します。
宮島には周回道路がありません。そのため、宮島の南西海岸「上述の青海苔浦から御床浦、内侍岩まで」は、間近かで見たり、訪れたりする機会も少なく、そして手付かずの自然がそのまま残されています。本土ではほとんど見られなくなった自然海岸や海浜植物が残されています。
「生物の多様化」があらためてクローズアップされてきた今日です。この行事を通して文化・歴史と合わせて、年1回、自然のいわば定点観測もできることは、あり難いことです。
